SNSは供養をどう変えていくのか -「R.I.P」で溢れかえるYoutube

18/05/31

facebookやInstagram、Twitterに代表されるソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)。スマートフォンの普及により、誰もが気軽にSNSを利用できるようになりましたが、その一方で、SNS疲れや誹謗中傷、インスタ映えへの批判など、さまざまな問題が発生してきました。しかし、SNSはそういった課題を生み出しながらも、あることをきっかけに、人間のポジティブな本性を表出させることもあります。

2018年4月、スウェーデン出身の世界的な音楽プロデューサーAvicii氏が、28歳の若さでこの世を去りました。若き才能の突然の死に、世界中のファンは悲しみ、動画共有サイトYoutubeでは、彼の動画のコメント欄に追悼の言葉「R.I.P(Rest in piace:安らかに眠れ)」が溢れました。

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そのほか、Avicii氏のFacebookやInstagramなどのSNSにも追悼コメントが集まり、Youtubeには、ファンが作成した追悼作品が立て続けに公開されました。この現象は、Avicii氏にかぎらず、著名人が亡くなったときには度々見られます。2009年、世界的歌手マイケル・ジャクソン氏が急逝したときも、そして彼の死から9年経った現在でも、彼のYoutube動画には「R.I.P」の言葉が捧げられています。しかし、SNSが生んだ追悼文化は、著名人だけにとどまりません。

供養心が「シェア」される時代

Facebookで繋がっていた友人のアカウントから、当人が亡くなったことや通夜の予定をのせた報告が、故人の家族や友人によって投稿されることがあります。SNSが普及する前までは、親族や友人、知人の死は、人づてやハガキで知ることがほとんどでした。SNSの普及にともない、その報告は日常使っているスマートフォンやパソコンの画面から突如知ることができるようになりました。

友人知人の死の報告投稿には、生前親しかった友人から1度しか会ったことのない知人からも、驚きや悲しみのコメントが集い、一人ひとりの故人とのストーリーが綴られる傾向があります。故人の命日や誕生日になると、友人らが故人の写真や年忌法要を終えた感想を投稿することもあり、「オープンな追悼」をとおして、誰かの胸で故人が生き続けていることを目の当たりにできるのは、SNS文化が進んだ現代ならではでしょう。

ハッシュタグが集める「人を想う気持ち」

「陰膳(かげぜん)」というものがあります。もともとは、旅行や遠方に出向いている家族の無事を願って、普段の食卓に供えるお膳のことを指しましたが、現在では葬儀や法事後の食事で、故人のために遺影の前にお供えするお膳のことを意味するようになりました。また、葬儀や法事後ではなくとも、年忌や月命日などに、故人の好物を用意し、想いを馳せながら供える場合もあります。

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写真共有サービスのinstagramでは「#(ハッシュタグ)」をつけることで、キーワードによって写真探しができます。さきほどの「陰膳」でハッシュタグ検索すると、様々な食事の写真とともに、用意した食事にこめられた想いを知ることができます。これまで、密やかに行われていた個人の供養が「ハッシュタグ」を通して世界にシェアできるようになり、私たちは家族や友人、知人だけではなく、著名人や見ず知らずの誰かへの供養心に触れることができるようになりました。

供養の多様化と高まる供養価値

SNS上で追悼のコメントをしたり、アーティストの追悼動画を公開したり、供養の想いを画像とともにシェアしたり、SNSの普及によって新たな供養心の表現が生まれてきました。しかし、その根底にあるものは、SNSの普及前と変わらず、故人への感謝や尊敬の気持ちだと思います。

これからも、新たなツールの登場によって、私たちの供養心は新たな表現方法を獲得していくと思いますが、決して単に簡素化に進むわけではないと思います。メールや電話で気軽に気持ちを伝えられるようになったことで、改めて手紙で思いをしたためることの価値が高まったように、通夜に集まったり、葬儀に出席したり、墓石に花を手向けたり、手紙を書いたりなど、従来の方法で供養を行うことの意味は、ますます強くなっていくのではないでしょうか。

人類が先祖代々受け継いできた供養文化。そして、技術革新によって生まれはじめた新たな供養心の表現。多様になってゆきながらも、より人の暖かい本性に寄り添える文化をともに育んでいければと思います。

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