19/04/01
引用:産経フォト
ここ最近、毎日のようにニュースで「インターネット上の炎上トラブル」が取り上げられています。炎上とは、インターネット上で不祥事が発覚したり、失言や詭弁を行ったと判断されたことをきっかけに、非難や批判が殺到して収拾がつかなくなる事態や状況のことを言います。一度炎上してしまったSNSの発言や動画等は、事件が忘れられたあともインナーネット上に残り、完全に削除することが不可能であるということから「デジタルタトゥー」という比喩表現も生まれています。そのため、ネット上での発言や投稿には細心の注意をはらう有名人や企業も増えているようです。
自身の発言や投稿により炎上を招いたことを後悔する人のために生まれたのが、新潟県国上寺の「炎上供養」です。どのようなものかを次の章で紹介していきます。
「国上寺(こくじょうじ)」は新潟県燕市にある「越後最後の古刹」とも言われ、上杉謙信ゆかりの寺としても知られています。国上寺では普段、厄除けや水子供養、合格祈願などを行っていますが、最近「炎上供養」を始めたことで話題を呼びました。
国上寺の「炎上供養」は、インターネット上で炎上してしまった画像や動画、発言等を山田光哲住職みずからが供養しています。2018年10月6日の柴燈大護摩火祭り大祭では、炎上した投稿や画像などを募集したところ、わずか数日の間になんと467件も供養依頼が集まったようです。
これらの投稿や画像はすべて撫木(なでき)に書き入れられ、柴燈大護摩の火にくべて焚き上げられました。当日、実際に国上寺に行ってみずから撫木に書き、火渡りをした方もいたようです。
国上寺が開設した炎上供養専用サイトでは、24時間年中無休で供養を依頼したい投稿をアップデートして奉納することができ、2019年3月現在は無料でアップロードできますが、今後は有料化が検討されているようです。
また、2018年12月には旅行会社が企画した「炎上供養バスツアー」が催行され、炎上供養とインターネット上での無病息災が祈祷されました。
2019年3月現在、炎上供養を行っているのは国上寺だけのようですが、インターネット特有の供養が行われた事例は他にもあります。
そのひとつが、2018年4月28・29日の「ニコニコ超会議」にて行われた「動画供養」です。この供養では「再生数1000以下の動画」、「コメント100以下」、「マイリスト100以下」といった、いわゆる低人気で、人から忘れられた動画が供養されました。
イベント当日はネット上で蝉丸Pと呼ばれる住職が導師となり、動画のワンシーンを流しながら、動画IDとタイトルが読み上げています。参加者は、過去に制作した自分のボツ動画を思い出しつつ、きれいに封印することができたのです。
この企画は2010年以来約8年ぶりに開催されましたが、事前に7,000件を超える動画が集まり、大きな注目を集めていました。
また、2013年にはクリエイターたちによる「没ネタナイト」と呼ばれる供養が、大阪の南堀江にある萬福寺で開催されています。この供養ではテレビや広告など、さまざまなメディアのクリエイターが集まって、ボツになった企画をプレゼンし、その後供養してもらうというものです。バカバカしくって笑えるネタもあれば、なぜボツになったのかと首をかしげるようなクオリティの高いものもあったようで、クリエイターにとって大変意義のある供養イベントとなっています。
このふたつの供養は同じインターネットやメディアの供養でも、国上寺の炎上供養とは異なり、「忘れる前にもう一度思い出しておきたい」という気持ちから開催されています。そのため、供養の様子からは、生みの親である投稿者やクリエイターの「ボツ作品」に対する愛情が伝わってきます。人でもない、ものでもない、形のないメディアの供養は、インターネットが普及した今の時代だからこそ生まれたものと言えるでしょう。
参考・参照サイト:
ニコニコ超会議2018 公式サイト
没ネタナイト
炎上問題が深刻化し、インターネット上の発言や投稿には神経質になりがちな昨今ですが、一方で忘れることも人間に与えられた権利のひとつです。炎上供養は自分自身の過去のあやまちを悔い改め教訓にする機会となり、少しでも心が安らぐものになるかもしれません。