大事な愛車とのお別れの日をどう迎えるか

21/12/23

 コロナ禍に世界が翻弄された2021年も、もうすぐ終わりを迎えようとしています。この一年、目的地への移動や家族でのお出掛け等の際には、感染防止を考え、バスや電車などの公共交通機関ではなく、マイカーを利用する機会が増えたという方も多かったと思います。今年ほど、愛車のことを頼もしく感じた年も滅多にないのではないでしょうか。そんな例年以上に活躍してくれた、クルマたちに感謝を込めて、今年最後は自動車に関する話題で締めくくりたいと思います。

廃車になったクルマはその後どうなるの?

廃車になったクルマはその後どうなるの?

皆さんの中には、過去に自分の愛車について“頻繁に故障するようになった”、“事故によるダメージが酷い”、“長年乗ってきてそろそろ寿命”などの理由で、泣く泣く手放したという経験がある方もいらっしゃるかもしれません。命ある生き物と同じように、どんなクルマも必ずいつかは終わりのときを迎えます。現在、乗用車の平均使用年数は約13年といわれますが、事故などで年間400万台以上が廃車になっているそうです。そんなに大量に廃車となるクルマは、その後どうなっているのでしょうか。まずは廃車についての簡単なご説明から始めましょう。
廃車とは、所有するクルマの車籍を抹消して、日本の公道を走る権利を無くすこと。一定期間だけ登録を抹消する方法もありますが、これからご紹介していく廃車は、二度とそのクルマを走れないようにする“永久抹消”にしたケースだとお考えください。廃車になったクルマは、主に解体業に持ち込まれて解体処分されるため、この世から完全にクルマの存在が消えることになります。“解体”というと、スクラップとして潰され、ゴミのように捨てられるイメージを抱かれるかもしれませんが、実は全然違います。
クルマは、エンジン、ドアなどの大型部品から、セキュリティシステムなどの電子部品に使われているような細かい部品まで、何万という部品によって作られています。クルマが走れなくなったとしても、使える部品はたくさんあってリサイクル可能なのです。解体においては、解体業者が小さな部品や素材まで丁寧に分けた上で、使える部品はリサイクルパーツとして必要とする人に販売され、まだ利用できる素材はリサイクル資源として新しい製品や素材に生まれ変わっていきます。さらに、海外では日本の自動車部品は評価が高く人気がありますので、例えば、かつての愛車の部品が、海を超えて別のクルマの一部になって今日どこかの国の街を走っている、なんてことも考えられるわけです。そう考えると、役割を終えた愛車を廃車にするという行為は、不要になった物の処分というより、クルマにとってみれば、まさに現在のSDGs時代にふさわしいサスティナブルな再生方法と言えるかもしれません。
ちなみに廃車の手続きは、もちろん個人でもできますが、手続きの手間や費用の面からも、ご自分と愛車に合った代行業者(ディーラーや自動車販売店、廃車買取専門業者)を探されることをお勧めします。

愛車を労い感謝を伝える『廃車供養』

愛車を労い感謝を伝える『廃車供養』

“愛車”という言葉が示すように、長年一緒に過ごしたクルマには、深い愛着があるため、離れがたいという人も多いでしょう。そんな方の気持ちを前に進ませる『廃車供養』という、愛車とのお別れの儀式があるのをご存知でしょうか。
そもそも『廃車供養』という概念は、1989年に愛知県豊橋市で、解体業者の人たちが、交通事故などで廃車になったクルマたちを弔うために供養祭を開催したことから始まったとされています。そこでは、廃車になったクルマたちに対し、人の葬儀と同じように、お寺で僧侶に念仏を唱えてもらい、参加した解体業者の方々によって焼香が行われたとのことで、これをきっかけに『廃車供養』が各地に広まっていったようです。自動車産業が盛んな地域などでは、関係企業や関連団体が、経済や暮らしに貢献して役割を終えた自動車への感謝、交通事故被害者の慰霊や交通安全祈願を目的とする行事として、定期的に『廃車供養』の式典を行っているところが見られます。では、『廃車供養』は個人としては行えないのでしょうか。もちろん神社や寺院に儀式をお願いすることもできますが、クルマの供養は何も本格的な式典にしなくとも自分で簡単にできます。
具体的な決まりはありませんが、“どうせ解体されるのだから”と汚れたまま廃車に送り出すのでなく、長年頑張ってくれたクルマに対して感謝を込めて洗車して綺麗に磨き、車内も細かい部分まで汚れやゴミがないように清掃してあげたいものです。さらに儀式を行う場合、たとえば神道形式であれば、お神酒をお供えし、盛り塩でお清めをして、最後に2礼・2拍手・1礼をするといった方法もあります。数々の思い出を共有したクルマとの最後のお別れの儀式になりますから、いろいろなことが甦ってきて感極まることもあるでしょう。大切なのは、長年一緒に過ごし走り続けてくれた愛車に対して、「これまでありがとう」という感謝や「お疲れ様」といった労い、別れを惜しむ気持ちを伝えることです。

お別れ前は自分なりの愛を込めた供養を

お別れ前は自分なりの愛を込めた供養を

長年連れ添った愛車との間には様々な思い出があることでしょう。恋人とのドライブ、家族揃っての旅行、子どもの習い事への送り迎えなど、その一つひとつのシーンに愛車も一緒にいるはずです。廃車になるとクルマは、もう道路を走ることができません。大切に長く乗って家族のように付き合ってきたのであれば、なおさら愛車との別れは辛いものです。数あるクルマの中から互いに出会えた幸せをこれからも忘れないためにも、お別れの記念に、自分の好きなスタイルで愛車との最後の思い出を作りたいものです。ここでは、あらたまった儀式としての『廃車供養』ではなく、廃車の日までの限られた時間の中でやっておきたいTo Do Listをご紹介しましょう。それぞれのオーナーだけのマイカーに対する個人的な『愛車供養』といっても良いかもしれません。
愛車を手放す前にしておきたいことの一つは、やはりドライブ。思い出めぐりという意味で、家族で訪れた観光地、恋人と一緒に行った海や山まで、ドライブを楽しむのもよし、時間に余裕があれば、車中泊をしながら行ったことのない遠くの地方まで「ドライブ旅行」をして、愛車との新しい思い出を作るのも素敵です。また、愛車との記念撮影もぜひやっておきたいことの一つ。思い出の場所に改めて出向いて一緒に写真に収まるもよし、愛車を運転している姿を友人や家族にビデオ撮影してもらうのも楽しいかもしれません。撮影した写真やビデオは、愛車専用のアルバムを作ったり、上映会を開いたりすると、思い出に奥行きが加わります。それから、エンブレムやルームミラーなど愛車のパーツを外して記念に残しておいたりする方も多いようです。とにかく、お別れした後に「何かすればよかった」と後悔しても遅いですから、できるだけ愛車と一緒に過ごす時間を多く作り、自分なりのやり方で愛車の記憶を残しておくことをお勧めします。納得行くまで『愛車供養』ができたら、廃車当日を迎えたときに晴れやかな気持ちで愛車とお別れできるのではないでしょうか。

さて、この年末年始は、一年頑張って走ってくれた愛車を労い、そしていつか訪れるお別れの日に思いを馳せ、いつも以上に感謝を込めて綺麗に洗車・掃除してあげ、新しい年を愛車とともに気持ちよくお迎えください。

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