24/8/21
毎年9月4日は、供養の大切さを改めて考え、先祖や家族をはじめとする「人」や「もの」に感謝の気持ちを寄せる機会を創出することを目的に制定された「供養の日」です。一般社団法人 供養の日普及推進協会では、来る2024年9月4日(水)の「供養の日」当日に、 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)にて、“供養の日9月4日制定記念フォーラム2024 「供養と感謝を考える」”を開催します。これを記念して本記事では、 イベント当日の内容をご案内するとともに、国立歴史民俗博物館や同館の供養にまつわる展示物などもご紹介いたします。
今回、「供養の日」のイベントが行われる国立歴史民俗博物館は、千葉県佐倉市の佐倉城址の一角に位置する日本最大級にして、歴史系で全国唯一の国立博物館です。通称「歴博」とも呼ばれるこの博物館では、昭和58(1983)年3月の開館以来、歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、教育活動の推進を目的として、日本の歴史と文化にまつわる貴重な歴史学、考古学、民俗学の資料を総合的に展示。先史‧古代から現代に至るまでの歴史と列島の民俗文化をテーマに、だれもが楽しく学べ、理解が深められるよう精密な複製品や復元模型なども取り入れています。
ここ国立歴史民俗博物館では、副館長を務められている山田慎也氏が供養の日普及推進協会の顧問をされている縁から、過去にも「供養の日」に特別講演やシンポジウムなどが行われてきました。また、2022年には半年以上にわたって(3月15日〜9月25日)、供養に関連する特集展示「亡き人と暮らす―位牌・仏壇・手元供養の歴史と民俗―」が開催され、多くの来場者が訪れて大好評を博したことも記憶に新しいところです。
いまや「供養の日」の聖地ともいえるこの場所で、今年2024年もイベントが開催されます。「歴博」の副館長である山田顧問による供養に関する基調講演に加え、副館長自ら民俗関連フロアの展示物を案内するツアーも予定されています(参加費無料)。
山田顧問は、2021年に同館で行われた「供養の日」のイベントで、歴史と文化の関係について次のように語られています。「文化は一度絶えたらそれで終わり。ですから、昔こうだったことが、こんな変遷を経て、いまこうなっているという知識を持っていることが重要で、歴史を見直すときに取り出せるよう覚えておく必要があります」。そのうえで供養について、「日本の供養は、いろいろな人を巻き込み、ある意味人々のつながりをつくり、社会を形成するという機能があったことを考えると、なにかと分断・個人化する現代において、供養の歴史文化を再認識し、現代にあった形を、みんなで模索して行く必要があると感じます」。
皆様も今年の「供養の日」、 「歴博」で“供養の日9月4日制定記念フォーラム2024”に参加し、改めて供養と感謝を考える機会とされてみてはいかがでしょう。
〈イベント概要〉
供養の日9月4日制定記念フォーラム2024
「供養と感謝を考える」
開催日時:2024年9月4日(水)13:00~16:00(受付開始12:30~)
開催場所:国立歴史民俗博物館ガイダンスルーム
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町117 TEL:050-5541-8600
プログラム
1. 開会挨拶
2. 基調講演 山田慎也顧問(国立歴史民俗博物館副館長)
3. 国立歴史民俗博物館展示ツアー
4. パートナー交流会
5. 閉会挨拶
※入館料は協会負担
※プログラムは予告なく変更される場合があります。ご了承ください。
※パートナー(会員)限定イベント
※要予約
山田慎也 国立歴史民俗博物館副館長(民俗学者)
国立歴史民俗博物館では、2フロアに計六つの展示室(現在第5展示室は閉室中)があり、日本の歴史や文化をいくつかの時代やテーマに分けて、生活や民衆の視点からその時代を体感できる数千点の資料が展示されています。ここでは、“民俗”をテーマとする第4展示室に注目してみます。なかでも「おそれと祈り」のコーナーでは、祭りや妖怪、まじない、人生儀礼、死との向きあいかたなどを取り上げた展示物の数々が、過去を生きた人々が安らかで幸せな生活を願って何を恐れ、何に祈ってきたのか…まさに“供養”について考えさせる機会を与えてくれます。この「おそれと祈り」コーナーの貴重な展示物の中から、一つの例として『供養絵額(くようえがく)』をご紹介しましょう。
岩手県の遠野市や花巻市などの中部地区には、江戸末期から大正末期頃まで、戦争などで不遇の死を遂げた人の家族や友人達が、画家に依頼して故人の肖像画を板に描き、葬儀後に寺院に納める風習がありました。その板絵は『供養絵額』と呼ばれ、画家は遺族から故人の人間性や性格、夢、志などを詳しく聞き取りし、故人の幸せな未来を想像して描いたといわれます。鮮やかな色遣いで故人の元気な様子が描かれ、なかには彫刻を貼り付けたものもあったそうです。大切な家族の御霊に寄り添い、慰めようとする供養の想いに満ちあふれた絵といえます。
山田顧問は、『供養絵額』について、次のようにコメントされています(産経新聞2015年10月17日付記事より)。「天寿を全うできなかった人はかわいそうな不幸な死者。だから特別な供養が必要だと、供養絵額を奉納して慰めた。描かれているのは、早世したり、若くして異国で戦死した『かわいそうな人』で、あの世で幸せに過ごしてほしいとの願いがこめられた」。
現代の遺影の起源の一つとされる『供養絵額』は、写真の普及とともに衰退し、現在は寺から取り払われつつあるといわれます。「歴博」には、岩手県遠野市の長泉寺に奉納された、夭折した死者を供養するための絵額が展示されています。
参考・参照サイト
一般財団法人地域創造 地域文化資産ポータル
国立歴史民俗博物館第4展示室
『供養絵額』を例に挙げましたが、民俗と供養の関わりは、何も「歴博」に展示されるようなものにみられる訳ではありません。そもそも“民俗”とは、古くから民間の生活や信仰に根ざして伝承されてきた風俗・習慣のことですから、供養と密接に関わるものは、私たちの身近なところにも実はたくさん、ごく普通に存在しています。わかりやすいところでいえば、各地で行われる盆行事などは最たる例ですし、そのなかの踊りなどが地方によって異なる形で継承されているケースも多く見られます。そうした民俗と供養の関わりの身近な例の一つとして、ここでは不祝儀袋のことを取り上げてみましょう。
ご存知のように不祝儀袋は、葬儀や法要の際に「御霊前」「御仏前」「御香典」などの名目でお金を入れて渡す袋のことです。香典袋ともいわれ、その袋には贈り物に使われる「水引」と呼ばれる帯紐が掛けられています。この紐は魔除けや未開封であることを示す意味もあるとされ、お祝いごとが赤白の紐であるに対し、一般的な葬儀などの法要では黒白の「水引」がよく使われています。しかし、関西地方から西、特に京都では、黄白の「水引」を掛けた不祝儀袋を使うことが一般的です。その理由として一説には、京都に現在もまだ、日本の都だった昔の習慣が残っているためだといわれます。当時の公家社会では、皇室に贈り物をする際には「紅井水引(くれないみずひき)」という玉虫色の水引が使われ、その色が黒に近かったため、間違うことがないよう黄白の水引を使うようになったと伝えられています。
このように、同じ供養の想いを込めた行為や道具だとしても、長い歴史や社会の変化なかで地域によってスタイルに違いが現れてくるなんて、実に興味深いですね。来る9月4日に「歴博」に来ると、そうした民俗と供養の関係についての新たな発見と出会えるかもしれませんよ。「歴博」には、「供養の日」イベント以外にも興味深い情報・展示がいっぱいありますので、ぜひご家族やご友人をお誘いのうえ、ご来訪いただきお楽しみください。そして、9月4日の「供養の日」を、供養の意味や大切さを考えるきっかけにしていただけたら幸いです。