25/4/17
現代の情報社会において、いまやスマートフォンは暮らしや仕事に欠かせない存在です。一方で、スマホはスペックが常に進化していますので、数年後には新しい機種への買い換えが求められます。3年も経たないうちに、スマホを新しい機種に買替えた経験がある方もきっと多いことでしょう。そんなとき、使わなくなるスマホとどんなお別れをすればよいでしょうか。今回は、古いスマホの処分の仕方について、供養の観点を交えながら考えてみることにします。
いまの消費社会においては、モノを買ったらずっと大事に使い続けるという昔のような価値観が通用しなくなっています。特にスマートフォンは、故障や不具合、傷のあるなしに関わらず、数年後には新しい機種にしないと、逆に不便になって生活や仕事に支障が出ることになります。そうした場合、機種交換して新しいスマホに替える訳ですが、そのとき愛用していたスマホを、皆さんはどうしていますか。まずは使わなくなったスマホのその後について考えてみましょう。
役割を終えたスマホといっても「処分するには気が引ける」、「愛着があるから持ち続けたい」という方もいらっしゃることでしょう。もちろん、古いスマホは機種交換後も処分せずに持ち続けることもできます。モバイル回線に接続できなくなり電話としては機能しなくなりますが、Wi-Fiを利用すればインターネットの閲覧も、動画や音楽鑑賞用のプレーヤーとしても以前のまま使える訳ですから、自宅のセカンド端末として活用されている方が多いのも事実です。そうすることで、新機種側のバッテリーの劣化を軽減できるというメリットもあります。ほかにも、お子さんのいらっしゃるご家庭では新たに回線契約し、子ども用のスマホとして古い機種を使われるケースも多いようです。そのように、処分せずとも古いスマホの二次活用の方法はいろいろあります。
また、オンライン上のフリーマーケットで販売したり、中古買取り業者に買い取ってもらうという方法も、廃棄以外の選択肢です。ただし、スマホには多くのデータや個人情報が入っていますので、その処理は自身で確実に行う必要があります。SIMカードやSDカードを抜くのはもちろん、残しておきたいデータは必ずバックアップを取ってから、各種サービスのアカウント、IDのログアウトを行い、本体の初期化は忘れずに。あとは愛着のあるスマホを大切に使ってくれる人へと渡ることを願いましょう。
このように、古いスマホをただ手放すのではなく、うまく二次利用したり、新しい引き取り手に使ってもらって、次の活躍の機会を与え続けることも、自分の暮らしの相棒として日々たっぷり活躍してくれた愛用スマホに対する感謝の示し方といえるのではないでしょうか。
もし古いスマホを二次利用や譲渡も行わず、ただ処分に踏み切れないまま押し入れや引き出しに入れ、ホコリを被った状態にしているとしたら、それは避けたほうが賢明です。古いスマホを長期間放置すると、バッテリーが劣化してガスが溜まって膨張し、発火や破裂の危険性があるともいわれます。なにより放置という扱いは、これまで活躍してくれた相棒に対して失礼というもの。それなら、きちんとした形でリサイクル処分してあげるほうが良いでしょう。
リサイクル処分は各市区町村などのリサイクルボックスも利用できますが、最も一般的な方法は、新機種に買替えの際、各キャリアのショップ・取扱店に回収してもらうのが個人情報の流出を防ぐ観点からも安心です。各キャリアではリサイクル活動が行われていますので、全国のショップ・取扱店で古いスマホをACアダプターなどの付属品を含めて随時無料で引き取ってもらえます。
では、そこで回収された古いスマホがそのあとどうなるか、皆さんはご存知でしょうか。引き取られたスマホは、各ショップで本体・充電器類などに分別され、後日まとめてリサイクル工場に送られます。リサイクル工場では、万全のセキュリティ体制のもと、まずスマホがどこのショップから回収されたのか端末の識別番号を1台ずつ読み取り、本体が種別ごとに計量されていきます。そのあとは、スマホに内蔵されている電池パックの取り外し作業。そのまま破砕すると電池パックが発火する恐れがあるからです。次に破砕処理に移り、最終的に15mm以下のサイズに破砕され、製錬工場へと出荷されます。
製錬工場では、原料として使われていた金属を抽出し製錬。スマホ本体からは金・銀・銅・パラジウム、バッテリーからはリチウムやコバルトといった金属が取り出され、それらが新しいスマホなど次の製品を生み出す材料として再び利用されていくことになります。特にパラジウムなど産出量の少ない資源(レアメタル)はとても貴重。つまり、リサイクル処分は資源の有効活用であると同時に、環境負荷の軽減にも繋がるということです。古いスマホにとっても新しい製品の一部として役立つことになるので、ホコリを被ったまま放置されるより嬉しいはず。そう考えると、リサイクル処分は、不要になったモノの廃棄というより、現在のサステナブルな時代における、モノに感謝して大切に扱う行為といえるのかもしれません。
考えてみれば、スマホは多くの人が朝目覚めた瞬間から夜就寝するまで、片時も肌身離さず持っているもの。コミュニケーションツールとして電話やメールはもちろん、旅先では道の案内役として、あるいは思い出の写真を記録するカメラとして、ショッピングではお財布として…いまやスマホは生活のあらゆる場面で、人の行動と切り離せない、無くては困る、かけがえのない存在です。そんな自分の相棒ともいえる大事なスマホをリサイクル処分するケースでは、いくら資源の有効活用のためだとわかっていても、いざ手放すとなれば、どこかしら寂しさや後ろめたい気持ちを感じるものです。毎日の生活をともにし、人と人の想いをつなぎ、大切な情報の提供と記録を担ってくれたスマホであれば、なおさら処分にためらう気持ちが生まれるのは当然のこと。きっと、昔からモノや道具に魂が宿っているという感覚を大事にしてきた私たち日本人の習性なのでしょう。それを踏まえると、愛着あるスマホを処分する場合、できれば “気持ちの良いお別れがしたい”というのが、多くの方の本音かと思います。であれば、まずは古いスマホを供養してから、リサイクル処分に出すという選択をされてみてはいかがでしょう。言い換えれば、スマホの供養サービスを受け付けてくれる神社や寺社があるということです。
そこで行われるのは、役割を終えたスマホをお祓いで清めてもらい、供養祈願する儀式です。数々の思い出を共有したスマホとのお別れの儀式ですから、このとき「ありがとう」という感謝や「お疲れ様」といった労いの想いを伝えてあげれば、スマホを手放す際の気持ちもきっと軽くなるはず。興味がある方は、そうしたサービスを受け付けてくれるお近くの神社や寺社を探されてみてはいかがでしょう。付き合いの長い神主や住職なら気軽に相談にのってくれるかもしれません。
もちろん神社や寺社は機器取り扱いのプロではありませんから、祈願後のスマホの処分自体は自身で行うことになります。そうだとしても、スマホ供養をして気持ちに一区切りつけてから買替えれば、これまで以上に晴れやかな気持ちで新しいスマホと出会えるのではないでしょうか。心の負荷を減らし、次のステップへと前進する上でも、供養の精神は大切にし続けたいものです。